こんにちは!
現役薬剤師のケイです!
薬剤師のドラマ、アンサングシンデレラが話題となっていますね!
薬剤師の仕事は地味で目立たない仕事がほとんどなので、
アンサング【unsung:称賛されない】だとしても仕方ありません。
今回は、日本で扱われている医薬品のうち、劇薬と毒薬をお伝えします!
医薬品には劇薬・毒薬・普通薬がある
日本では厚生労働省が管理している医薬品がおよそ1万4千種ほどあります。
薬の形はさまざまで、
錠剤、粉薬、シロップ剤、注射剤、塗り薬、貼り薬、点眼薬など
たくさんの種類の薬が存在します。
その中でも、
大きく【劇薬・毒薬・普通薬】の3種類に分かれています。
劇薬とは?危険性・致死率の高さは?
法律上での劇薬の定義
医薬品医療機器等法第44条第2項の規定に基づき、劇性が強いものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品のことを「劇薬」といい、次のような規制を受ける。
・直接の容器又は被包に「劇」の文字の表示義務(法第44条第2項)
・開封販売等の制限(法第45条)
・譲渡の制限(法第46条)
・14歳未満の者、不安があると認められる者への交付制限(法第47条)
・他の物と区別して貯蔵し、陳列する義務(法第48条)
劇薬の危険性・致死量
急性毒性(概略の致死量:mg/kg)が次のいずれかに該当するもの
- 経口投与の場合、劇薬は50%致死量が300 mg/kg以下の値を示すもの。
- 皮下投与の場合、劇薬は50%致死量が200 mg/kg以下の値を示すもの。
- 静脈内投与の場合、劇薬は50%致死量が100 mg/kg以下の値を示すもの。
※50%致死量(LD50)とは半数が死ぬ薬の量のこと。
動物の場合、100匹に薬を飲ませ、50匹が死んでしまう量のこと。
分かりやすくするため、
実際に多くの患者さんに飲まれている劇薬を例に挙げます。
具体例①:アムロジピン(アムロジン、ノルバスク)
薬の箱のデザイン
アムロジピンの危険性・致死率は?
人間にアムロジピン薬を飲ませて
致死率を導き出せませんので、動物実験で危険性・致死率を予測します。
アムロジピンの単回投与毒性試験【LD50(50%致死量):mg/㎏】
経口投与 | 静脈内投与 | |||
オス | メス | オス | メス | |
マウス | 37 | 48 | 31 | 34 |
ラット | 393 | 686 | 45 | 42 |
マウスでは経口投与が300 mg/kg以下ですし、
静脈内投与でも100 mg/kg以下となっています!
ラットでは経口投与が基準外ですが、
静脈内投与では100 mg/kg以下となっています!
この結果から、アムロジピンは劇薬として決められています。
静脈内投与での毒性があまりにも高いので、注射剤は販売されていません。
このデーターを使って、人間の致死率をシュミレーションしてみます。
50Kgの男性の大人を想定すると、37㎎/Kg × 50Kg = 1850㎎となります。
1錠、2.5㎎の薬ですので740錠を一気に飲むと致死率が50%となります。
具体例②:ドネペジル(アリセプト)
薬の箱のデザイン
商品名の左上に劇と書かれています
アリセプトの単回投与毒性試験【LD50(50%致死量):mg/㎏】
経口投与 | 静脈内投与 | |||
オス | メス | オス | メス | |
マウス | 45.2 | 48.1 | 3.7 | 4.8 |
ラット | 36.9 | 32.6 | 8.0 | 7.6 |
アリセプトでは、マウスもラットもどちらでも
経口投与が300 mg/kg以下ですし、静脈内投与でも100 mg/kg以下となっています!
この結果から、アリセプトは劇薬として決められています。
アリセプトも静脈内投与での毒性があまりにも高いので、注射剤は販売されていません。
毒薬の定義!危険性・致死率の高さは?
法律上での毒薬の定義
医薬品医療機器等法第44条第2項の規定に基づき、毒性が強いものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品のことを「毒薬」といい、次のような規制を受ける。
・直接の容器又は被包に「毒」の文字の表示義務(法第44条第2項)
・開封販売等の制限(法第45条)
・譲渡の制限(法第46条)
・14歳未満の者、不安があると認められる者への交付制限(法第47条)
・毒薬を貯蔵し、陳列する場所の施錠義務(法第48条)
毒薬の危険性・致死量
急性毒性(概略の致死量:mg/kg)が次のいずれかに該当するもの
- 経口投与の場合、毒薬は50%致死量が30 mg/kg以下の値を示すもの。
- 皮下投与の場合、毒薬は50%致死量が20 mg/kg以下の値を示すもの。
- 静脈内投与の場合、毒薬は50%致死量が10 mg/kg以下の値を示すもの。
※50%致死量(LD50)とは半数が死ぬ薬の量のこと。
動物の場合、100匹に薬を飲ませ、50匹が死んでしまう量のこと。
劇薬と毒薬を見比べてみると、どの項目も10倍違うことに気付くと思います。
つまり、毒薬の方が劇薬よりも10倍危ないということです!
法律の定義は難しくてわかりません…
こちらでも、分かりやすくするため、
実際に多くの患者さんに使われている毒薬を例に挙げます。
具体例:オキサリプラチン(エルプラット)
薬の箱のデザイン
商品名の左上に毒と書かれています
エルプラットの単回投与毒性試験【LD50(50%致死量):mg/㎏】
静脈内投与 | ||
オス | メス | |
ラット | 18 | 24 |
サル | 9.1 | – |
エルプラットは少量で致死率がかなり高めとなっています。
この結果から、エルプラットは毒薬と決められています。
毒性が高いですが、医薬品として使用されています。
どのような治療に使うのでしょうか?
エルプラットは抗がん剤なのです。
このデーターを使って、同じように人間の致死率をシュミレーションしてみます。
50Kgの男性の大人を想定すると、9.1㎎/Kg × 50Kg = 455㎎となります。
1本200㎎の薬ですので、3本を一気に注射すると致死率が50%となります。
まとめ
日本で処方されている薬のうち、劇薬と毒薬の定義、危険性・致死性をお伝えしました。
劇薬と毒薬ではない薬が、普通薬です。
私の体感では、1万4千の薬のうち8-9割が普通薬で、1割が劇薬で、10-20種が毒薬です。
毒薬は非常に危ない薬なので数が極端に少ないです。
毒薬の方が劇薬よりも10倍危ないということもお伝えしました。
医師が1万4千種ある薬を毎日、多くの患者さんに処方しています。
薬剤師は医師のうっかりミスを見つけるために働いています。
アンサング【unsung:称賛されない】な仕事ですが、日々頑張っています!
温かい目で応援してくれたら嬉しいです!